小浜島集落の風習

小浜島集落へ向かう港は何もないだだっ広い平地でした。
今でこそ港にはカフェやレンタサイクル店などができているようですが、私たちが到着した平成元年の夏にはまだ何にもなかったんです。

港の隅の方にピカピカの観光バスが停まっていて、これは15時チェックインの私たちがバイトをすることになるリゾートホテルのお客さま送迎専用バスでした。
「なんなんだ?とんでもないところに来てしまったぞ?」って私たちはすぐに状況を把握しました。

小浜島と言うのは、NHKの朝ドラ「ちゅらさん」の舞台となって全国的な知名度が上がりましたが、私たちが着いた平成元年当時は信号機もない、そもそも島の集落で乗用車なんか見たこともないような島でした。
映るテレビはNHKだけ。

着いた瞬間には知らなかったことなんですが、仕事中に全島各地の現場を回っている会社の社員さんに聞いた話では、小浜島がいちばん住民の気質が良くないとのことでした。
まぁこれは宮古島や粟国島なんかの島んちゅの悪口もちょくちょく聞きますから、小浜島だけに限ったことではないでしょう。

ただこれもやっぱり、小浜島で生活するようになって分かったんですが、夜這いの習慣があるらしいんです。
これとってもデンジャラスじゃないですか?
私たちみたいな一応若かった女性にとっては身の毛もよだつ話です。

だって島中探したって、地元の独身女性なんかいないんですよ。
みんな逃げ足早いから、とっとともうちょっと都会へ避難しちゃってるんです。
私たちは島の男性に目をつけられたら最後だと思って、そりゃあ貞操を守って生活しました。
そこまで着いた初日は小浜島のことを良く知らなかったので、いや、夜這いの習慣とか聞いたら一目散で逃げ出してましたよ。
何も分からなかったから、港まで私たちを迎えに来てくれた会社の車に乗ったんです。

小浜島集落

やがて小浜島の集落のどん詰まりにある、むかしは民宿だったらしい建物の前で車は停まりました。
外階段を登り2階に行くように促され、中に入ると屋内はなんだか分からない、平べったい楕円形の虫が無数にいて、ハエみたいな控えめサイズじゃなくて、体長3センチくらいで力強い羽音を立てて旋回しているんです。

寮での私たちの居室の六畳間も同じこと。
「なんですか?この虫?」語気を強めて送ってくれたスタッフの人に聞いたら、「カナブンさー、やがて慣れるよ」と返されてしまいました。「慣れる前に私たちの耳がどうにかなっちゃうんじゃないの?」と言いたかったんですが、怒り顔の私たちから逃げ出すようにスタッフの人は帰って行きました。

もちろん寮にはクーラーなんて、どこを探してもありませんでした。

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