行きたいな、パナリ出張

私たちがバイトしていたリゾートホテルには別館があったんです。
小浜島から漁船で40分ほどのところにある、「新城島」と言う住民登録者が4人しかいないとかって、メッチャ離島です。
かろうじて無人島ではなかっただけ良かったかも知れません。

新城島にある別館は、「離れ」の沖縄風の言い回しで、「パナリ」と呼ばれていました。
毎朝、朝礼でその日の配置を指示されるんですが、私もうパナリに行きたくって行きたくって。
たまには前日から、「明日は私パナリだからね」って宣言してから帰ったりもしていました。

パナリに行けるのは毎日男女一組だけ。
だってこの別館は客室が4つしかないんです。
お給料もらって遊びに行くようなもんでしょ。
だからちょっと仕事ができるようになると、みんなパナリに行きたがるんです。

パナリでは、いくらゆっくり部屋を作ってもお昼前にはその日の仕事が終わっちゃうんです。
だから迎えの漁船が来る夕方まで遊んでいられるんです。
水着を持っていたら海で泳いでも文句言われないし、チェックイン前の時間だったらクーラーの効いた客室にいてもいいんです。
たまにジャングルのような島を散歩すると、ホテル内で放し飼いされているクジャクが何羽かパナリにも連れて来られていて、野生化しちゃってだっとこ走っているんですけど、なんか別の種類の鳥みたいでかわいいんですよ。

行きたいな、パナリ出張

パナリの行き帰りは漁船なんですか、お客さまも同じ扱いだったと思います。
小浜島から新城島までの海の透明度はすばらしくて、サンゴ礁はもちろんなんですが、海底ケーブルまで見えるほどでした。

こんなチョロい仕事内容のパナリ出張ですから人気は高く、私もバイトをしていた3ヶ月間で4、5回しか行ったことはありませんでした。
そのうち1回は那覇の本社から来ていた視察の社員さんとの同行でした。
さすがに社員さんと同行では勝手に客室を使ったりはできませんでしたが、ビーチの日陰でお話ししていたら、意外なことを言われました。

「君たち、ここの仕事が終わったら本島にに来るんだって?仕事は決まってるの?」
「いえ、まだなにも決めてません」
「那覇のホテルに入ってみないかい?あっちはここよりも簡単な現場だし、シフトを組んだり半分は管理的な仕事も覚えてもらうし、コンピューターを使った仕事も入ってくるんだけど、どう?」

那覇での勤務先は市内でも上から数えた方が早い格の高級ホテルでした。
仕事の内容も少し変化するようだし、なにより私たちの仕事が良く評価されたように感じたので、悪い話ではないと私は思ったんです。

「ただ、友だちといっしょだから、彼女の考えも聞いてみないと」
と、その話は回答を少し待ってもらったんです。

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